コメディカル組織運営研究会
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学校教育分野ではますますアクティブラーニング着目した学修法の導入が進められています。臨床場面でも職場内の会議に始まり、近年の多職種や施設間連携等の重要性が高まっていることを考えると、グループワークやディスカッションを行う機会が増えていると思います。学生へのグループワーク時やワークショップ形式の研修会などにおいて感じることですが、「非常に盛り上がる」時と、「なんだか全体的に硬いなあ…」と言う時があります。もちろん参加者(学年や職種)の違いやテーマの違い等の影響もうけますが、ファシリテーターの影響を受けていると感じます。
ファシリテーションとはすでに一般的な用語だと思いますが、「集団による知的相互作用を促進する働き」と定義されています。それを行う人であるファシリテーターも含め、グループワークやワークショップの進行に関して「ファシリテーション」を意識することが重要になります。ファシリテーターに求められる力に関して、草地は著書「人を動かすファシリテーション思考」にて以下の10点を挙げています。
①場をつくる力②場をデザインする力③先を読む力④聞く力・聴く力⑤伝える力⑥引き出す力⑦書く力:見える化する力⑧まとめる力⑨共有する力⑩動かす力
いずれも重要ですが、いくつか私が気になった点を挙げてみます。
まず「①場をつくる力」です。
先日私がファシリテーターとして参加した研修会では、1グループ10名で縦5人が向かい合った机の配置でした。その配置では、端の人は一番遠くの人の発言が聞き取りづらく、両端で別々の話をしてしまうような状況でした。ディスカッションもなかなか盛り上がらず、あまり活発な意見が出ることもありませんでした。そこで2つ目の課題以降は大きな紙を壁に貼りグループ全員が立った状態でディスカッションを行う事にしました。するとグループの一体感が増し、活発な議論が展開できていました。参加者が同じ方向を見て議論が進むことや、場合よっては立ち位置が変わったりするような体の動きが出ることも議論を活発にする効果もあると感じました。
次に「④聞く力・聴く力」です。
一つ目の「聞く力」とは“傾聴する力”です。コーチングでも重要とされますが、ファシリテーターにはディスカッションを促すためにも、「自分の意見や思いをはさまず相手の言葉を聴く」ことが重要になります。
もう一つの「聴く力」は“質問する力”です。発問力とも言われますが、参加者に対してファシリテーターが質問を投げかけることにより、より深い思考を促したり議論の方向性を示したりすることが可能です。私自身学生に対して「どのような言葉で質問したら、この学生はより深く考えるだろう」とか「答えの方向に導けるだろうか」等と考えながら発問しています。この辺りは失敗を繰り返しながら何度も練習する必要があります。
最後に「⑥引き出す力」です。
ファシリテーターは参加者の話し合いを「促進」し「容易」にすることが役割です。話し合いの中で参加者の「総意」の上に色づけていくことが必要です。ファシリテーターを行っていて難しいことは、自分自身の考えている方向に誘導してしまいそうになる事や、参加者の中の偏った意見に引っ張られそうになるところです。いかに客観的にこのグループの全員の意見を引き出しつつ、総意を引き出すことができるかが腕の見せ所だと感じます。
紹介した本は、入門書で読みやすくファシリテーションとは何か、どのような能力が必要かが良く理解できると思います。グループワークのファシリテーターの業務を担う事だけではなく、ファシリテーションの思考をもつことは意義のあることだと思います。導入として一読しても良いかと思います。
草地 真:人を動かすファシリテーション思考ぱる,ぱる出版,2017
2019年4月5日
J.Y.
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