コメディカル組織運営研究会
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一般に、人材の成長の大半は仕事上の経験によって決まると言われています。つまり、どのような業務や課題に取り組み、そこから何を学んだかによって、その後成長の仕方が変わってくるというわけです。
若手職員やある程度経験を経た中堅職員に対して、どのような業務や課題に取り組んでもらえば、その職員の成長につながるのか、悩んでいる管理者も多いのではないかと思います。
松尾睦編著、『医療プロフェッショナルの経験学習』は、「医療従事者は、キャリアの各段階で、どのような経験から、いかなる能力を獲得しているのか。」という問いに対して、「経験学習」というキーワードを切り口に、検証した本です。
扱う職種も、看護師、保健師、薬剤師、放射線技師、救急救命士、病院事務職、救急救命医師、公衆衛生医師、病院長と多岐にわたり、それぞれにアンケートやインタビュー調査を実施しています。
興味深い内容が並ぶのですが、個人的におもしろいと思ったのが、看護師の経験学習プロセスでした。
「患者・家族との関わり」のなかで、6~10年目のキャリア中期(中堅)に「患者・家族とのポジティブな関わり(感謝の言葉など)」を通して、コミュニケーション能力を獲得していたのに対して、11年目以降のキャリア後期(熟達者)では「患者・家族とのネガティブな関わり(苦情など)」を通してコミュニケーション能力を向上させていたそうです。
様々な考察ができると思いますが、ここではネガティブな経験から学ぶためには、最初の10年で患者・家族とのポジティブな関わりや技術的な能力的基盤を形成する必要があると考察しています。
また、すべての職種を通して能力の獲得の順序は「技術的(テクニカル)能力→対人的能力→概念的(コンセプチュアル)能力」の順で能力を獲得する傾向があるようです。
私自身は、この本には取り上げられていない職種である理学療法士なのですが、私も概ねこの順序で能力を獲得してきたように思います。
部門内の業務の割振りや人事、また研修を組み立てるにあたり、大変示唆に富む本でした。また、個人的には、経験が10年を超えてもまだまだ人は成長をするのだということが書かれており、勇気づけられました。
興味がありましたら、一読されることをお勧めします。
2018年10月10日
N.K
[参考・引用図書]
松尾睦編著 『医療プロフェッショナルの経験学習』、同文館出版,2018
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