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no.6「学際研究と経営学」

 「学際」という言葉があります.研究や学問は,ある程度,専門性を持った学問領域の範疇で行ことが一般的です.一方,新しい研究分野の進展は,それまでの方法を踏襲しているばかりでは得にくい,ということも事実です.従来とは異なった観点,発想,分析手法により,あらたな成果を生み出すための研究,これが「学際的研究」となります.

 学際的研究は,それまではあまり結び付かなかった,複数の学問領域に精通している1人の研究者が行う場合(スーパー研究者ですね…)もありますが,多くは,複数の学問分野の研究者らが共同で研究にあたり,様々な成果を生み出していきます.例えば,先進医療の研究においては,産学連携などにより,大学病院に所属する医学分野の人材と,企業に所属する数学,工学,理工学,情報工学など,さまざまな分野の専門家の共同研究が多くみられ,たくさんの有意義な研究成果が生まれています.

 このような学際領域の研究は,なにも「理系」に区分される自然科学(Nature Science)領域に限ったことでなく,いわゆる「文系」と思われる社会科学(Social Science)に位置する,経営学にも該当します.「世界の経営学者はいま何を考えているのか(英治出版,2012)」の著者である入山章栄先生は,「経営学は,他の学問分野から理論的基盤を借りている応用科学であり,経済学系,認知心理学系,社会学系の流派があり,結果,それぞれの基盤となっている学問に新しい知見が加わると,その基盤を借りている経営学が活性化するという関係にある」と述べています(http://president.jp/articles/-/9233).このように,経営学自体が,まだまだ発展途上性に富んだ学問である,ということは間違いありません.

 その中でも,チャレンジングな学際領域である,医療機関に関する経営学的研究が注目され始めたのは,ここ最近の潮流であると言えます.現在,日本の医療を取り巻く環境は,大きな過渡期に差しかかっています.医療者にとっては,今までの「ただ診療をすればいい」という親方日の丸的な考えから,「適切な競争基準に基づき,提供するサービスの質を比較評価される」という概念への脱却を余儀なくされる時代が,そう遠くない未来に到来することが予測されます.

 経営学的研究の基本は,日々の組織活動における努力に他なりません.前掲の「世界の経営学者はいま何を考えているのか」には,最近の経営学研究のフロンティアで明らかになったことが,簡便な表現で紹介されています.医療機関運営に関しての直接的な記載はありませんが,みなさんの組織運営において,現在まで集積された知識,手法,技術などを柔軟に応用するばかりでなく,時には既存の方法を疑い,破壊的創造を試みるためにも,たくさんのヒントを得られる良書であると思います.ぜひ,ご一読ください.

2013.11.28 M・Y