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no.55 「組織における意思決定について」

 平成29年度もあと1ヶ月となり、2025年地域包括ケアシステムの構築に向け診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が目前となった今、誰も経験した事のない異次元の超高齢社会をどう乗り切るか、見えない未来に対してどのような方策がより成功に近いのか、制度の中で組織としての有効な選択は何か、多くの組織で意思決定に頭を悩ませていることと推察する。短期的には診療報酬改定の新たな入院医療の評価体系・人員配置の基準に応じてどの入院料を算定するか、介護報酬における老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援機能をどの程度満たして算定するか、通所・訪問においてはリハビリテーションマネジメントの種類は何を目指すのかなど、選択の場面はそこかしこにある。リハビリテーション部門の運営においては組織の方針に従い目標設定をするが、報酬改定の内容が明らかになってきた事に伴い、若干の修正を求められているかも知れない。

 

 それらの選択、方針・目標修正などの意思決定は誰が、どのような方法で行うのかは2つに大別される。一つは個人による意思決定であり、もう一方は集団による意思決定である。個人による意思決定はスピード感があり、責任が明確で一貫した価値観を維持する事に長けている。集団による意思決定は多くの情報や知識を決定プロセスに投入できることで質の高い決定を生み出す。また、多くの人に受け入れられやすい。どちらが優れているかというと「場合による」というのが明白な答えである1)。

 

 では成果を挙げている意思決定の特徴とはどのようなものか?P・F・ドラッカーによれば5つのステップが必要とされている。第一に、あらゆる問題はそのほとんどが基本の理解に基づき、原則と手順によっての決定を通してのみ解決できると述べている。真に例外的なもののみ個別的な対応が必要である。第二に、決定が満たすべき必要条件を明確にし、その条件を満足させなければならない。第三に、決定においては「何が正しいか」を考えなければならない。誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点は無駄である。第四に、決定を行動に変えなければならない。ここが最も時間がかかる部分であり、決定の実行が具体的な手順として誰か特定の人の仕事と責任になるまでは、いかなる決定も行われていないのに等しく、それまでは、意図があるだけである。第五に、決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。最善の決定と言えども間違っている可能性は高く、大きな成果をあげた決定も、やがて陳腐化する2)。と述べている。

 

 前述の5つのステップを踏み、最終的な意思決定をするためには議論を重ねる必要性を否定する人は居ないだろう。最終決定が個人によるものでも、議論(時間の長短はさておき)を全くしない決定はありえないと思われる。議論に目を向けた場合、限られた側近の意見を聞くだけのリーダーと広く意見を求めさらに議論を推進するリーダーでは意思決定後の実行性に大きな差を生じる。「議論の推進者」3)としてのリーダーシップ行動については下記の成書をぜひご覧ください。本コラムが意思決定に悩む多くの人に少しでもお役に立てれば幸いです。

 

2018年月3月8日

H.M

 

引用・参考

1)スティーブン・P・ロビンス著 高木晴夫訳:組織行動のマネジメント,ダイヤモンド社,2009.

2)P・F・ドラッカー著 上田惇生編訳:プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ成長するか,ダイヤモンド社,2000.

3)リズ・ワイズマン/グレッグ・マキューン著 関美和訳:メンバーの才能を開花させる技法,海と月社,2015.

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