コメディカル組織運営研究会
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昨年読んだ本の中で最もインスパイアされたのが、神戸大学大学院医学研究科教授であり、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療部長の岩田健太郎先生の『Dr.岩田健太郎のスーパー指導術~劇的に効果が出る“教えるコツ”“教わるコツ”』(羊土社,2012)であった。
一気に読んで、アドレナリンが吹き出し、すぐに岩田先生にメールを送って、職場での特別講演「臨床における指導方法~研修医指導を行うための教えるコツ~」をお願いしたところ、ご快諾いただき、実現した。
パワーポイントなしの90分。とても興味深い話の連続で、これほど講演の上手い先生には、私の人生で初めて出会った(…と、同時に日々の自分の仕事を振り返り、恥ずかしさと情けなさで溜息が出た)。
講演では、最初に実習指導者の先生方に実習生のどんなところに困るかを聞かれ、いくつか出た時点でほぼ全部を網羅する形で話が進んでいった。学生にどう指導するかについては、本を読んでいても感じたが、結局、何が問題なのかを分析し、それに適切な方法で指導するということであった。
ただ、一口にそう言ってしまえば簡単なのだが、そう簡単な話ではない。なぜか?もし、簡単だとすれば、対象者を評価して、問題点を抽出し、ゴールを決めて、プランを立てるということのプロである医療職の実習で、実習指導者が学生指導に困るということはないはずである。職場教育だって同じではないか。しかし、現実には、様々な問題が起きている。したがって「学生の何が問題なのかを分析し、それに適切な方法で指導する」ということにたどり着くのはそう簡単な話ではないと言える。
では、どういうことか。そこにたどり着くためには、分析するための材料、臨床でいえば狭義の意味での評価(情報収集、検査・測定)が必要になる。実は、この分析するための材料が圧倒的に足りないままに、学生指導あるいは新人指導をしているのである。
なぜ学生がそういう行動を取ったのか、どこでつまずいているのか、何だったらできるのか、などなど、学生の問題の正体がわかるまで材料を集めなくてはならないが、実際にはわかっている気になって、材料集めが不十分なまま分析して指導しているのではないか…と、先生の話を解釈した。
先生のお話で印象的だったのは、日本の学生は答えることはものすごくトレーニングされるが、質問することはトレーニングされないので、ものすごく下手ということだった。
そうだとすると、指導者も昔は学生だったのだから、質問することはトレーニングされていない。よって、学生の問題の正体がわかるだけの材料を集めることが不十分であることに納得がいく。特に、医療職であれば対象者の評価をする経験を日常的に積んでいるから、実際にできるのかもしれないが、何となくできる気になっている可能性もあるのではないか。
これまでは、実習教育にしても新人教育にしても、何か問題があると、指導や教育を受ける側がなぜこのようなことになっているかという議論が多かったように思う。それももちろん大事な議論ではあるが、岩田先生の著書や本を読む限り、学生や新人が未熟なのは当り前で、指導する側が相手によって指導する適切な方法を選択できるだけのスキルを持つ必要があることに気づき、日々、ブラッシュアップしなければならないと考えた。
前回のコラム『リーダーとフォロワーの間にある「信頼」を考える』の最後は、「自分の立ち位置がリーダーでもフォロワーでも、日頃からのコミュニケーションによる信頼関係の構築とそのメンテナンスが重要だなあ、と思う今日この頃です。」と結ばれている。
リーダーであってもフォロワーであってもメンテナンスが重要なのは間違いないのだが、リーダー、つまり指導したり、教育する側のほうがよりメンテナンス、ブラッシュアップする必要があると考えられる。
知識や技術など進化のスピードは恐ろしいほどの速さで進んでいる。それは、ブラッシュアップのスピードも上げないとついていけなくなるということを意味している。
急ごう!急ごう!スピードを上げて、ブラッシュアップに励もう!
2017年月2月2日 Y.I
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