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no.27「新人教育で考えること」

 4月から半年が過ぎ、新入職員の方たちは皆さんの職場で大切な戦力に育った頃ではないかと思います。今回は新入職員が更に成長するための手助けになるような話題にしたいと思い筆をとりました。

 

私の目指す社会人像は「自分で考え、自分で前に進む」ような、いわゆる自己完結型の人間です。臨床現場では各職員がその局面ごとに様々なリスクを想定して最善の行動をとります。そのためには職員一人一人が本質を理解し、その考えのもとに行動をする必要があります。それは決して独り善がりな行動ではないことが重要です。

そのような人材が増えれば組織運営は安定し、トップは組織の維持に労力を費やすのではなく、中長期的な戦略に意識を集中することができます。

しかし人材育成は難しいです。職員にはそれぞれに個性があり、仕事に対するモチベーションの高め方が違うことが原因の一つかと思います。教育プログラムを一方的に行うと効果は出にくいものです。

 

コーチング・マネジメントでは次のような事例が紹介されています。

テニスの指導者が、ある日、テニスは素人のスキーのインストラクターに、テニスのコーチを依頼したところ、テニスの指導者よりも生徒の技術が伸びたそうです。

 

テニスの指導者は、生徒に「ボールをよく見なさい」と指導したのに対し、スキーのインストラクターは「ボールはどんな回転をしている?」と尋ねたそうです。

「ボールをよく見なさい」は、テニスの指導者にとっては「回転をよく見なさい」が含まれているのですが、生徒には十分に伝わらず、また、その溝を埋める手段を見つけられず、結果、生徒の技術が伸びませんでした。

スキーのインストラクターは「ボールをよく見るポイント」を疑問形で投げかけ、生徒に考えさせ、能動的にさせることで、結果、「ボールをよく見る」まで誘導しました。

 

テニスの指導者が行ったことは「ティーチング」でしたが、スキーのインストラクターが行ったことは「コーチング」でした…というお話です。

良いプレーヤーが良い指導者になれるかは別問題と言われるのはこんな点かも知れません。

 

では、そもそもコーチングとは何でしょう。

参考図書によれば「目標を達成するために必要な知識や技術、ツールを備えさせるプロセス」と表現しています。生徒はそれぞれ価値観や考え方が違います。その個性に合わせ、指導の仕方を変えるのはごく自然なことかと思います。

臨床現場における患者指導では常に行っており、それは職員指導においても同じことが言えると思います。

コーチングにより新入職員が「自分で考え、自分で前に進む」人材になる可能性は増えるのではないでしょうか。後輩が育てば、さらに新しい後輩を育ててくれて組織は安定します。「私はトップなので人材育成から少し離れてしまいます」という方もいると思います。ではトップはどのように取り組むべきでしょうか。中国に「先ず隗より始めよ」という言葉があります。トップは側近や近くの部下を大切に育てることで、おのずと人材や組織の成長の歯車は動き出すと思います。

 

ただし、コーチングは奥が深く、指導者自身の努力と変革を要します。

同じ時間をかけて育てるのであれば「自分で考え、自分で前に進む」人材に育てる方が良いかと思います。後輩もそれを望む人が多いのではないでしょうか

 

そして、私の最終目標は、後輩が育って自分を楽にしてくれること…、とズルい事を考えながら、コーチングの為に自分の変革に努力する今日この頃です。


2015年10月1日 M.Y


参考文献:伊藤守著.コーチングマネジメント.discover21.2005年

    :外山滋比古著.思考の整理学.筑摩書房.1986年

組織運営に関わる様々な議論を行っています!是非、みなさまも参加しませんか?

10月25日には、第3回学術集会も予定しています。

沢山の参加をお待ちしています!

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